AKA-博田法の治療の実際

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AKA-博田法の治療の実際

初診時の診療の流れを簡単に説明します。

問 診

症状を問診表に記入していただき、それを元に診察を行います。初診の際に患者さんに共通してお尋ねする項目は以下の3つです。
3つの質問の答えが「はい」の場合は、レントゲンやMRIに写る異常、前の病院で診断された病名、症状の部位や強弱に関係なく、その原因は関節機能障害のことが多く、AKA-博田法により改善することが期待できます。

1.横になって安静にしているときに症状(痛み・コリ・シビレなど)は和らぎますか?

例えば、横になって楽な姿勢をしていると症状が緩和しますか?整形外科的な症状(痛み・シビレ・コリ等)の多くは、横になり安静にしていると症状が和らぐ傾向があります。AKA-博田法で良くなる症状も同様です。安静にしていてもつらい場合、関節機能障害が重症化しているか、関節機能障害以外の原因の可能性もあるため注意が必要です。

2.温めると楽になりますか?

温めることで神経の圧迫や軟骨のすり減りが改善することはありません。つまり温めることで軽減する症状の多くはそれらが原因でないと考えられます。こういった「痛み」「シビレ」「コリ」等の整形外科的な症状の多くは関節機能障害が原因です。AKA-博田法で良くなることが期待できます。

3.症状は日によって変化しますか?

「痛み」だけでなく、「シビレ」「コリ」「突っ張り感」「重さ」等々、その症状は個々人により異なります。コリが痛みに変わったり、以前は痛みだけであったが、時にはシビレも併発したりと症状が変化することもあります。また、その変化の仕方も患者さんにより異なります。例えば「疲れるとひどくなる」「長時間同じ姿勢をしているとつらくなる」「動き始めがつらい」「朝起きたときがつらい」といったようにさまざまです。つらい部位が患者さんにより異なるだけでなく、日によって変わる方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、多くの患者さんに共通する点は「症状の強弱や部位が日によって変わることがある」ということです。このように日により変わる症状は、関節機能障害が原因で起こる症状の特徴ともいえます。この場合、AKA-博田法で良くなる可能性があります。
なかには「いつも痛い(シビレる)」という方もいらっしゃいます。しかし、こういった方も、詳しく症状を伺うと、いつも痛い(シビレる)なかにも若干症状に強弱の変化があります。この様な場合も症状が日によって変わるためAKA-博田法で良くなる可能性があります。

触 診 神経の検査

整形外科の病気では神経障害の有無を見極めることは重要です。神経の主な働きは感覚(痛みやシビレを感じる)と運動(手や足を動かす)の2つです。他に反射という機能を司っています。
整形外科における神経の障害の検査というと、MRIを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、これらの検査はMRIを撮らなくても、以下のような方法で概ね見当をつけることが出来ます。

①筋力テスト
神経が障害されると、筋力が低下することがあります。手や足首の曲げ伸ばし、肘・膝の曲げ伸ばしで力がない場合は注意が必要です。
力が入らなかったり、筋力が低下したりしている場合でも、神経に異常がある場合と、痛みで力が入らない場合があるため、症状を伺いながら慎重に検査します。
②知覚力テスト
本当に神経が障害されている場合、痛みやシビレを感じるだけでなく、触られた感覚がなくなる(触られても感じない)ことがあります。反射や筋力に異常がみられるような場合には知覚検査が重要です。ハケや筆、ボールペンの先のようなもので皮膚を軽く触って、体の左右で差があるかを調べます。

(注)
腰痛の場合、ヘルニアや狭窄症などで(脊髄)神経を障害していると、その神経が分布する部位が痛んだりシビレたりする他に、脳から「足を動かすように」という指令が送られなくなるため、足の筋力低下することがあります。
他にも排尿に関係する神経が同じ様な部位にあるため、排尿障害を起こすこともあります。このような症状で、AKA-博田法で治療しても良くならない場合は、神経が障害されていることが考えられます。
足の筋力や感覚の低下、排尿の障害がない場合は、ヘルニアや狭窄が痛みやシビレの原因であることは少なく、多くは関節機能障害が原因です。これは腰だけでなく首の場合も同様です。いずれもAKA-博田法により良くなることが期待できます。
痛みやシビレというと、多くの方は神経の障害を連想するようです。特にシビレは専門家の整形外科医でもそのように考える傾向があります。しかし多くは関節機能障害が原因のため、AKA-博田法で良くなります。
脊髄神経の障害が原因の痛みやシビレは、神経が分布する部位に常に一定して起きていることが特徴です。「私はいつも痛い(シビレる)」という方もいらっしゃいますが、詳しく伺うと、時には症状に強弱があったり、つらい部位が変わったりすることが多いようです。このような症状は神経の障害ではなく、関節機能障害が原因で起こる症状の特徴です。
また、足の筋力低下というと、高齢の方は自分も筋力が低下していると思いがちです。しかし、ここでいう筋力低下とは老化によるものではなく、病的なものを指します。痛くて力が入れられないという筋力低下は、痛みが良くなると力が入るようになることがほとんどです。「時々力が入らないときがある」「調子が悪いと力が入らない」といった症状は、神経の障害が原因のことは稀で、多くは関節機能障害が原因のためAKA-博田法で良くなります。本当に神経が障害されている場合は、痛みや老化とは関係なく常に力が入らないことがほとんどです。例えば座って足首を反らすときも充分に足首が反り返らなかったり、反り返す力が病的に弱かったりします。また、スリッパを履いて歩いていてもつま先が挙がらずに脱げてしまったりすることがあります。
しかし、重要なことは、神経の障害だけでなく関節機能障害により筋力低下や痛み・シビレ等が起こることもあるということです。従ってその見極めにAKA-博田法が必要です。足がシビレて筋力が弱く、手術が必要と診断された方がAKA-博田法で良くなり手術をしなくても良くなったケースもあります。
③反射のテスト
神経が正常な場合、打腱器というゴム製のハンマーで特定の部位を叩くと筋肉が瞬間的に緊張します。これを反射といいます。神経に障害があると、反射が過剰に強くなるか、弱くなったり失われたりします。特に左右差がある場合は注意して診ていきます。
腰下肢痛であれば膝蓋腱(しつがいけん)反射、アキレス腱反射を調べます。首・肩・手の症状では腕の反射を調べます。

治療前の説明

検査の後、AKA-博田法の視点から患者さんの症状に対して説明を行います。実際にAKA-博田法を行う(適応)かどうかは院長が診察してから行います。AKA-博田法の考え方は従来の整形外科の考え方とは大きく異なるため、その両者を比較しながら丁寧に説明いたします。
当院はインフォームドコンセントを重要視しているため、充分なご説明の後、患者さんが納得された上で治療を行います。

関節の可動域の検査

まずは、立った姿勢で身体を前後左右に曲げて、仙腸関節を始めとする体幹の関節の動きを検査します。
つづいて、ベッドに寝ていただき仙腸関節の可動域を検査します。股関節や膝が痛む場合は、股関節や膝の可動域も検査します。下の写真は検査の様子です。
いずれの検査も仙腸関節の動きを診ることが出来るため、AKA‐博田法では重要な検査です。

【検査の様子】

①SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)
患者さんに仰向けでベッドに寝ていただき、膝を伸ばしたまま足を上に挙げます。
②ファダーフテスト
膝を90度に曲げ、股関節を内側に倒します。
③ファベーレテスト
次に膝を90度に曲げ、かかとを反対側の膝につけた状態で検側の膝を外側に倒します。このような動作を行った際の角度や抵抗感、痛みを診ます。

治 療

検査の後、実際に治療を行います。診察・治療の際に衣類を脱いで頂く必要はありません(厚手の上着やスカート、硬いガードル等を履いている場合、着替えが必要な事もあります)。
AKA-博田法は術者の手で関節を動かしてその機能障害を治療します。痛みの根本原因である仙腸関節の動きはわずか2~3mm程度のため、1mm単位で仙腸関節の動きを手で感じながら治療します。治療は強い力で行わない半面、非常に高度な技術と経験を必要とします。治療中、患者さんは軽く触れられている程度にしか感じないでしょう。

AKA-博田法で行う治療手技は主に「離開法」と「滑り法」の2つです。

①離開法
骨と骨の隙間(関節面)を広げる手技です。写真のような姿勢をとっていただき、術者が関節面を開くように動かします。関節の動きの範囲はわずか2~3mmです。そのため、治療には細心の注意が必要です。仙腸関節では上部離開、下部離開の2つの手技があります。

【治療の様子】

上部離開法

下部離開法

②滑り法
離開法が骨と骨の隙間(関節面)を離すように動かすのに対し、滑り法は互いに接する骨を平行に動かします。仙腸関節では上方滑りと下方滑りの2つの手技があります。

【治療の様子】

上方滑り法

下方滑り法

治療後の評価

AKA-博田法で症状が変化した場合
変化した症状は、仙腸関節を始めとする各関節の機能障害が原因と考えられます。AKA-博田法を続けていくことで改善が期待できます。
AKA-博田法で症状が変化しなかった場合
関節機能障害が原因の場合(①)と、それ以外が原因の場合(②)が考えられます。
  • ①関節機能障害が原因であるが、仙腸関節炎が強いため治療後も症状の改善がみられない。この場合、定期的な治療が必要になります。一定期間定期的に治療することで、仙腸関節炎が改善し、症状が楽になることが期待できます。
  • ②関節機能障害だけでなく、それ以外の原因による可能性も考慮しながら治療する必要があります。一定期間AKA-博田法を受診しても症状に変化が現れない場合、関節機能障害が原因ではないと判断することがあります。

関節機能障害以外の原因では以下のようなものがあります。

  1. 本当に神経が障害されている場合(注1)
  2. 感染症で骨が破壊されているもの(例:脊椎カリエスや脊椎炎など)
  3. 悪性腫瘍(ガン)が骨に転移しておこるもの
  4. 脊髄腫瘍によって起こる痛み
  5. 内臓の病気によって起こる痛み(例:膵炎や結石などによる腰痛)
  6. 精神疾患によるもの(うつ病など)

関節以外の原因が考えられる場合、より専門的な検査や治療が必要となることがあります。その場合、必要に応じて適切な医療機関をご紹介します。

つらい症状をより根本的に治すためにもAKA-博田法で診断を行い、症状の本当の原因を突き止めることが治療の第一歩となります。
注1:本当に神経が障害されているかどうかは画像診断だけではわかりません。

詳しくはこちらをご覧下さい。

日常生活の注意事項の説明(原則として初診時のみ)

治療後、今日の治療についての説明と再発を防ぐための日常生活の注意点等をお話します。
治療は当院で行えますが、予防は患者さんご自身が気をつけて頂くも大切です。