むち打ち症(頚椎捻挫)の一般論
頚椎捻挫とは交通事故やスポーツ事故などで頚部に不意に衝撃を受け、頸椎周囲の筋肉や靱帯、神経や血管などの組織に損傷を受けた状態を言います。
首の痛みなどのほか、ひどいときは頭痛、肩こり、吐き気、めまいなどがみられます。頸椎捻挫の多くは一部分の軽い症状にとどまりますが、重症例では、交感神経や筋肉の異常な緊張により、腰が重い、肩がこる、上半身がしびれる、眼が疲れる、だるいなどの症状が見られ、長年苦しむこともしばしばあります。
望クリニックでの考え方
ほとんどが数週間以内に安静のみで治癒します。しかし、慢性的に症状の残るものや、受傷後数日してから症状が出現してきたものの中には、交通事故やスポーツ等の受傷時の衝撃で関節の機能障害を起こしている場合があります。AKA-博田法を行い症状に変化がみられれば、関節の機能障害が原因の可能性があるため治療を続けていきます。
治療期間は数回のAKA-博田法で良くなる方もいれば、定期的に治療が必要な方もいます。AKA-博田法により症状が変化する方は、関節の機能障害が原因のため良くなることが期待できます。
(注)むち打ち症の中に交通事故によるものがあります。この場合、関節機能障害だけでなく自律神経のアンバランス、事故後の保障の問題等様々な要因が複雑に絡まっているケースが多々あります。この場合、かえって症状が悪化したり、正確な診断・治療ができないことがあるため、当院ではAKA-博田法を行わないことがあります。
症例
S44年 男性 とび職
来院までの経過
平成21年2月、仕事中に2階程度の高さから転落。総合病院に救急搬送され、右手関節の骨折、頚椎捻挫と診断された。右手関節はギプス固定、頚部は頚椎カラーで固定。
受傷1週間後、首の痛みが続き、上を向けないので医師に相談した所、安静にしていれば2,3週間で治ると言われた。
2カ月後、右手関節の骨折は治癒したが首の痛みは変わらない為、再度レントゲンを撮ったが特に問題はなかった。仕事に復帰したが上を向くと激痛が走り、以前のように仕事ができない。
他院での診断名 | 頚椎捻挫 |
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他院での治療 | 頚椎カラーによる安静。鎮痛薬、湿布。急性期を過ぎてからは牽引、ホットパック等も行っている。詳細不明だが神経ブロックも行ったが効果なかった。 |
来院時の症状 | 受傷から約5カ月後(平成21年6月)に当院を受診。痛みの為、上を向く動作ができない。元々、腰痛持ち。明らかな筋力低下はなし。(下図参照) |
自覚症状の経過
AKA-博田法初回 | 「上が向けるようになりました、首の痛みは半分くらい楽なようです」 |
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3回目 | 「首の痛みはほとんどなくなりました。」 |
5回目 | 「首はもう大丈夫なようです、そういえば以前のように腰が痛くなる事もないです。仕事もできます。」 |
現在 | 首の症状は消失、腰痛も落ち着いている。仕事柄、関節に負担がかかりやすい事もあり、時々首や腰が痛くなるが2-3カ月に1回AKA-博田法を受診することで仕事に支障を来たすことなく過ごせている。 |
望クリニックでの診断
仙腸関節、頚部の関節機能障害
考察
この方は受傷前から腰が痛かったことから、元々仙腸関節に機能障害があったと考えられます。仙腸関節の機能障害は2次的に他の関節に機能障害を引き起こすきっかけになります。その為、頚部の関節は機能障害を起こしやすい状態にあり、そこに転落が重なり頚部周辺の関節に機能障害が起きたと考えられます。
この方は関節の機能障害があったため安静だけでは治らなかったのです。このように、怪我の治癒期間を過ぎても症状が続く場合は、関節機能障害が原因の可能性があります。