四十肩・五十肩とは(一般論)
肩関節に現れる症状で骨折や脱臼、リウマチなどの病気や外的要因がなく肩が痛くなったり、腕があがりにくくなったりすることを「四十肩・五十肩」として定義されています。
四十肩・五十肩は1つの病態で、病名ではありません。
四十・五十とは年齢を指しており、主に50代をピークに40~60歳代の世代に起こりやすいことから、四十肩や五十肩とよびます。
痛みは、肩だけにとどまらず、首や腕にも痛みや不快感を生じる場合が多くあります。ひどい場合は、睡眠時の体勢により苦痛を感じたり、痛みで眠れないこともあります。
望クリニックでの考え方
四十肩、五十肩のほとんどは仙腸関節をはじめ胸椎々間関節、肋椎関節、胸肋関節、胸鎖関節等の機能障害が原因です。
発症の機序は基本的に肩こりと同じですが、(肩コリの症例参照リンク)四十肩、五十肩の場合は痛みの他に、拘縮(硬くなって動きが悪くなること)を伴うことが特徴です。
拘縮には、①仮性拘縮と②真性拘縮があり、治り方が異なります。
- ①仮性拘縮とは、痛みの為に肩を動かせない状態です。これは、AKA-博田法により痛みが消えると速やかに肩関節を動かせるようになります。
- ②真性拘縮とは、AKA-博田法を行って肩周囲の痛みが改善されても肩関節の動きが改善されない状態です。この場合制限の範囲以上に動かすと痛みを感じます。真性拘縮は、AKA-博田法を行ったうえで、痛くない範囲で動かしていると徐々に可動域は改善していきます。先に痛みが改善し、その後に肩が柔らかくなっていきます。
仮に直後は動きが良くなっても、すぐに元の硬さに戻るだけでなく、長期的な経過はかえって治りが遅くなる傾向があるためです。
仮性拘縮、真性拘縮とAKA-博田法に対する改善の仕方に違いはあるものの、いずれも関節機能障害によるものが多く、AKA-博田法による治療が必須であると考えております。
症例
S32年 女性
来院までの経過
10年くらい前から慢性的な肩コリを感じ、近くの整形外科で、リハビリや鎮痛薬、湿布による治療を受けていた。平成21年の2月頃より右肩が痛み始めたが痛みを我慢して家事をしていたところ、5月頃より右肩が挙がらなくなった。かかりつけの整形外科では五十肩といわれた。整形外科ではリハビリや内服治療、他に鍼や整体もしたが良くならない為、6月に当院受診。
30年前にぎっくり腰をしてから慢性的な腰痛がある。
他院での診断 | 五十肩 |
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他院での治療 | 鎮痛薬、筋肉を弛緩させる薬、リハビリ。鍼灸院、整体等もしている。 |
来院時の症状 | 両肩のコリ。右肩が硬くなっており、痛みで挙げる事ができない。慢性的な腰痛もある。 |
自覚症状の経過
AKA-博田法初回 | 「右肩の痛みは楽になりました。痛みが楽になったので肩を少し挙げられるようになりました。」 |
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3回目 | 「右肩の痛みはもうないです。肩も以前の様に挙がるようになりました。肩こりも大分楽ですね。腰痛もほとんど感じなくなってきましたがまだ少し、右の腰に痛みが残ります。」 |
5回目 | 「日常生活で困る事はほとんどありません。」 |
現在 | 遠方であった為、5回の治療で一旦治療終了としたが現在(平成22年7月)まで特に再発なく過ごされている。 |
望クリニックでの診断
仙腸関節や胸椎椎間関節、肋椎関節、胸肋関節、胸鎖関節等の機能障害
考察
仙腸関節を主に胸椎関節、肋椎関節、胸肋関節、胸鎖関節をAKA-博田法で治療した結果、肩の拘縮は速やかに改善されていきました。この事からこの拘縮は仮性拘縮であったと考えられます。
五十肩に至った経緯は次のように推測できます。
- 30年前、ぎっくり腰をした時に仙腸関節の機能障害が発症。
- 仙腸関節をはじめ、2次的に他の関節に機能障害が起こり、肩コリ発症。
- 肩コリを我慢しながら家事をするうちに関節機能障害が悪化し、肩にも痛みが発症。
- 痛みにより肩関節が拘縮をおこし、手が挙がらなくなる。
この方は30年前のぎっくり腰で仙腸関節の機能障害を起こした事が始まりでした。
肩コリや四十肩、五十肩は肩がつらいため、肩周辺を治療するのでは?そもそも仙腸関節は骨盤だから肩の症状で治療するのはおかしいのでは?と大部分の方が考えるでしょう。しかし実際にはこの方の様に、仙腸関節の機能障害が根本の原因である事が多いようです。整体等で肩をマッサージすると一時的には楽になりますが、その効果は長続きはしません。これは、本当の原因である仙腸関節を治療していないためです。